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会員からのメッセージライフライン雑感



ライフライン雑感

関西ライフライン研究会 副幹事長
能島暢呂(岐阜大学工学部)

 この6月に、ある国際会議に参加するためローマを訪れ、1週間あまり滞在した。 まだ学生の頃に観光で数日間を過ごして以来18年ぶりのことであった。 「すべての道はローマに通ず」や「ローマは一日にしてならず」といった言葉に象徴されるように、ローマの成立過程は社会基盤施設の整備と深いかかわりがあった。 アッピア街道、アーチ橋、水道橋、下水溝など、2000年もの時を経て今なおその姿を残す施設は多い。多くは既に遺跡となっているが、中にはほぼ当時のまま供用されているものもある。公共インフラの存在意義を訪問者にこれだけ意識させる都市は、 ローマの他にはないと思う。もっとも当時の人々にとっては、これらの社会基盤施設はあってあたりまえの存在であったかもしれない。現在の我々が、日頃使っているライフラインの存在をあまり意識していないように。
 わが国におけるライフライン施設のストックのほとんどは、ここ数十年の間に整備が進められてきたものである。 その間、市民の日常生活や都市の社会経済活動のライフライン機能への依存度合いも、飛躍的に高まった。それは、百年程度の周期で繰り返し発生してきた南海トラフ沿いの巨大地震のサイクルにさえも完全に収まってしまうような短い期間のことであった。 千年から数万年にもなる活動周期を持つ内陸活断層については言うまでもないことである。関西地方は長期的に見れば地震活動が非常に活発な地域であるが、自然現象の時間スケールと社会変化のスピードとのギャップが、「地震防災意識の空白域」を生み出していたことは否めない。
 その中で、関西ライフライン研究会は発足当初から、関西地方の地震環境を正しく理解し、ライフラインの現状を直視し、そして来るべき地震に備えることの重要性を一貫して訴え続けてきた。阪神・淡路大震災を乗り越えて多くの教訓を得た今、我々はさらに新たな脅威にさらされており、以前にも増して真摯に 地震対策に取り組んでゆかなければならない。関西ライフライン研究会の第5期の活動はそこに焦点を当てたものであり、(2000年とは言わないまでも)後世に地震に強いライフラインを残してゆくために肝心な時期にさしかかっている。関西ライフライン研究会の会員の皆様には、様々な研究会活動を通じて、 その意識の高さと意気込みの程をご披露いただけるものと期待している。
 ところで先日、ガス湯沸かし器でお風呂を入れている間に、不覚にも寝込んでしまった。数時間後に目が覚めたときにはガスが止まっていて、冷たい水が浴槽一杯になって溢れ出している状態だった。自宅はLPガスなので、ガスを使い果たしてボンベを空にしてしまったのだと思い込んだ私は、その日のお風呂は 諦めて、翌日になってガス会社に電話した。すると、長時間のガス流出を検知したマイコンメータが異常使用パターンと判断して遮断装置が作動したのであり、ボタン一つで復帰できるのだという。地震後にマイコンメータが作動した場合に、復帰の仕方がわからず電話する人が多いことは知っていたが、まさか使い過ぎで LPガスが遮断されるとは思っていなかった。メータを調べてみればすぐに気づいたはずなのだが、めったにないことが起きて一旦思い込んでしまうと、冷静に判断することができない。関西ライフライン研究会で勉強していながら、「紺屋の白袴」とはこのことだと苦笑せざるを得なかった。ローマ2000年の歴史に思いを馳せるのもいいが、 やはり自分の身の回りのことも大切なのであった。


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